〇サクセスストーリー
マドンナは、1958年、アメリカのミシガン州で8人兄妹の3番目として生まれます。
・母の死が起爆剤
マドンナが5歳の時、実母が乳癌で亡くなっており、母の死がその後の活動の原動力になったといいます。
「母が亡くなったあと淋しさでぽっかり穴があいたようで、なにかを切望せずにはいられなかった。あの空虚感がなかったらあんなにがむしゃらにならなかったでしょうね」
小さい頃の一番の遊び友達であるモイラ・マクファーリンも、「お母さんが亡くならなかったら、おそらく今の彼女はいないと思うわ」と語ります。
・強烈な成功願望
マドンナは、次のように若い頃から強い成功願望を口にしています。
「絶対に成功してやる、絶対に成功しなきゃ、だってもうほかに行く所はないんだから」
「きっと成功する、っていつだって信じてたから」
「スターになるためならどんなことでもする」
「神様と同じくらい有名にならなきゃ満足できない」
「有名になりたいっていうのが口癖だった」
「世界中の注目をすべて集めたいのよ。世界中のみんなにあたしを知ってもらうだけじゃなくて、あたしを愛して、愛して、愛してほしいの」
「そう、子供のときからスター扱いされないと気がすまなかったのよ。なにごとにも一番じゃないとね」
「わたしは世界を征服するわ」
「わたしの人生を突き動かしているのは、平凡でいることへの恐怖心なの」
・有言実行
その願いを叶えるべく、マドンナは実際に行動に起こしています。マドンナをよく知る人も、次のように語ります。
「全身からエナジーがあふれてたよ。そのエナジーを向ける方向こそ定まってなかったが、エナジーの塊だということははっきりしていたね」
「あの子には学ぼうとする熱意がみなぎっていた。貪欲なほどだったよ。それだけは否定できない」
学校でロシア史を教えていた教師も、「彼女はいつも私の正面に座りました」と振り返ります。
・貧乏生活
マドンナは成功する前、ニューヨークで貧乏生活を送っています。
「今みたいになる前は、そりゃあがむしゃらにがんばったわよ。成功する前は文字通り飢えてて、道で見つけたものを食べたりゴミ箱をあさったりしてたわ」
「あのあたりはゴキブリがうようよ、玄関先にはアル中がたむろしてるし、どこもかしこも、すえたビールみたいな臭いが漂ってるんだもの」
「よくあんな所に住めたものだわ、と思うくらい、最悪の環境」
当時のマドンナを知る人も次のように言います。
「マドンナはお金がなくて、三日間なにも食べてなかったのよ。彼女、ギターを持ってたけど、ネックが折れてたわ。自転車も持ってたけど、タイヤはつるつる。かわいそうな子。ほんとに貧乏してたのね」
・強い意志
マドンナがハードワーカーであることは、アンチも認めるところです。
また、マドンナは菜食主義者ですが、ゴミ箱をあさるほど飢えていた時でさえ、ビッグマックなど肉が入っているものは食べず、フライドポテトを食べるなど徹底していたといいます。
・成功例
このような徹底した成功願望と行動力によって、マドンナは貧乏のどん底から自分の想像以上の成功を手にします。彼女がどのくらいの成功を収めたのか、一例を挙げます。
1.シングルとアルバムを合わせた総売上枚数は女性アーティストとして世界1位の3億枚以上
2.「全世界で最も売れた女性レコーディングアーティスト」「史上最も成功した女性アーティスト」としてギネス・ワールド・レコーズに認定
3.女性アーティストによる1コンサート・ツアーでの収益が4億800万ドルで世界1位。ギネス認定
4.世界のヒットチャートで最も多くの国で、シングル・アルバム共に1位を獲得(シングル43ヶ国、アルバム40ヶ国)
5.全米シングルチャートでTOP10獲得数が37曲で歴代1位
6.タイム誌「過去1世紀で最も影響力を持つ25人の女性」の1人に選出
〇成功の苦しみ
そんな大成功を収めたマドンナですが、成功したために生じる苦悩を語っています。
・プライバシーがなくなる
名誉を手に入れれば必然的にプライバシーはなくなります。
「一番悪いことは、多くの人が言うようにプライバシーがなくなること。そしてミスを犯すことができなくなること。なにかすれば、こと細かに検証され批評されること」
「有名になることは苦悩とエクスタシーが同時に来るようなものね。普通なら会えないような人と会っていろんな経験ができるけど、その一方でプライベートは一切なくなるのよ」
「カメラマンにはいつも恐い思いをさせられるわ!家を出ると必ず待ち構えているの・・・。木の影からいきなり飛び出してきたりして。その絶え間ない恐怖との戦いなのよ。ああいうことが起こるたびに、ショックから立ち直るまでに最低1時間はかかるわ」
・ストーカー被害
マドンナは、ロバート・ホスキンズという男から執拗なストーカー被害を受けています。この男は、「自分はマドンナの夫なのだから、妻に会わせてくれなければ、彼女の喉を右から左へすぱっと切って、家にいる全員を殺す」と言っていました。
マドンナは心の底から恐怖を感じます。マドンナの当時の様子について、友人の1人はこう振り返ります。
「彼女、本当におびえてたわ。気持ちを落ち着かせるのは大変だったみたい。外に出るのもこわがって。人生にも仕事にも嫌気がさして、自分のキャリアが間違った方向に進んでる。そう確信してたわ」
以来マドンナは、「ホスキンズが家にいて、彼に追いかけられる夢を見るようになった」といいます。
こういった出来事もあり、マドンナは一人になることを怖がり、「ステージの上で暗殺されるのでは」という恐怖に苛まれています。
・失う不安
大きな成功を収めたマドンナですが、ニューヨークでゴミ箱をあさっていた頃に戻ってしまうのではという恐れも吐露しています。
「ゴミ箱から拾って食べていたことを決して忘れないわ。どんなにお金を儲けても。理解してもらえるかしら。同じ経験を実際にしないかぎり、わからないでしょうね。わたしって地球上でいちばん誤解されているのよ」
〇幸せではない
マドンナは「成功がこんなものだとは想像もできなかった」と言い、名声の重荷について「拷問の苦しみを負わされている」と表現しています。
自身の成功体験を通して、富や名誉といったものでは、いかに幸せになれないかを次のように何度も訴えています。
「有名になるのがどんなことか誰も教えてくれなかったの。『名声は誤解のひとつの形である』。この言葉はいつでも頭の片隅にあるわ」
「名声なんて幻だって言ったり、そのことに注意を向けてくれたりする人が誰もいなかったとしたら、気づきたくても気づきようがないでしょう?」
「カッコよくても、お金持ちでも、有名でも、それだけでは意味がないの。それ自体は幸福をもたらしてくれないのよ」
「すべてがすごく均質化されてるでしょ。この美しい人生の魅力だ、とか、この車に乗れば人気者になれる、っていう具合に。これってほんとに強力な幻想で、人はそれに夢中になっちゃうのよ」
「こんな風にすれば幸せが手に入る。この服を着れば、みんなからちやほやされる。そんなのはぜんぶ幻想よ。でも、ものすごくパワフルな幻想だから、わたしをはじめ、誰もがその虜になってしまう。わたしはもう目が覚めたけど」
「そう、すばらしいことがすべてあたしに起こったわ。でもまだハッピーじゃない」
「世間に認められたり、一世を風靡したって浮足立ったり、世界中の人に愛されて人気者になったり、そんなことは本当の意味で愛されることの代わりには絶対にならないってわかったの」
「富と名声を手にして20年たった今、やっと自分の意見をはっきり述べる権利を得たような気がするわ。今みんなが心を奪われてるのはセレブになることだけ。言っとくけど、そんなのナンセンスよ。そのことをあたし以上にわかってる人がいるかしら?」
「成功する前は、名声の代償がどういうものかまったくわからないものよ。有名になってはじめて、それに気づくのね」
「名声なんてくだらない。それはわたしがいちばんよく知っている」
「何もかもがフィクション、そうでしょ?あたしは小説の登場人物にすぎないんだわ。すべては幻。すべてがね。(この小説のタイトルは)『孤独な人生』」
「みんな誤解しているのよ。人は名声を手に入れたら、多くの人から愛され、幸福な人生を送れると考える。
だけど、私と同じ立場の人はみんな、その反対に真理があると答えるわ。本当に愛されているという実感もなく、何千人もの人に賞賛されても、かえって虚しさを感じさせられるだけ。名声は麻薬に似ている。それは、自分の本当の価値を見失わせてしまうの」
「お金が増えれば増えるほど、問題も増えていくのよ。昔は無一文だったあたしが今はある程度稼ぐようになったけど、手元に残ってるのは問題だけ。お金がない頃、なんとか生き延びてた頃、人生は単純だったわ」
「お金が増えるにつれて電話の数も増えるし、歩くときはうつむくようになる」
マドンナに近しい人も、マドンナがいかに幸せではない人生を送っているかを証言します。
「マドンナは孤独だった。スターの宿命というやつさ。人気者で、みんなから愛される有名人のマドンナが、夜ひとりぼっちで家に帰って、思いきり泣いてたんだよ」(元恋人であり元プロデューサーのジェリービーン・ベニテス)
「心の中でいつも怒りが爆発していた。心の安らぎのようなものを感じたことは、一瞬たりともなかったんだ」(元夫のショーン・ペン)
「マドンナはあんまり幸せな女性じゃないんじゃないかな。僕自身の経験から言うと、あんなふうに外的なパーソナリティを変えながらやってきて、注目の中心にいようと頑張っているのは、そんなに居心地のいいものじゃないんだよ」(デヴィッド・ボウイ)
「商業的には大成功をおさめ続けていたが、かつてあれほど切望していた名声は、いまや彼女を干からびるまで吸い尽くそうとする腹をすかせた強欲なヒルでしかなく、心から幸福だと感じる妨げとなっていた。
ファンのほとんどは誤った印象を持っており、彼女は有名だから大いに自己達成感を得られ、愛されていると実感しているものだと思っていた。しかし、有名人は逆も真実だとわかっている。私生活で心から満足していないと、何千人から慕われても、実際にはいっそう空虚な気持ちになるだけなのだと」(J・ランディ・タラボレッリ「コンプリートマドンナ」著者)
・アメリカンライフ
マドンナの歌に「アメリカンライフ」というのがありますが、この歌は、多くの人が望んでいる幸せが見せかけだけのものであることを表現した内容になっています。歌詞の一部を抜粋します。
私は優勢でいようとした
私はトップにいようとした
私は役割を演じようとした
けど、何のためにそうしようとしてたのか、なぜもっと欲しがったのか、どういうわけか忘れてしまったわ
あぁ、なんてバカだったの
私には弁護士とマネージャーがいる
エージェントもシェフもいる
3人のお手伝いと1人のアシスタントがいる
それに、運転手もジェット飛行機もトレーナーも執事も
そして、5人のボディーガードも庭師もスタイリストだっている
これで私が満足してると思う?
私はただアメリカンドリームの中を生きている
そして思い知ったの
そんなのが見せかけだけだってことが